経済再生への正念場、2015年度が始まった。バブル崩壊から二十余年、知財立国宣言から十余年、今こそ長い目で見たわが国独自の知財戦略を構築するべきだ。いや、仕掛けてほしい。それは新たな権利の創造や知財戦略システムの構築である。
知財立国戦略の中枢にいた荒井寿光氏の「知財立国が危ない」(日本経済新聞社刊、共著)が売れている。ある有力な弁理士は「書かれていることすべてが正しい。一点残念なのは行政自らへの反省がない点だ」と指摘する。例えばネット、コンテンツなど広い意味の「知財庁」創設もその一つ。結果的に知財戦略本部は生まれたが、さらにステップアップすることが必要ではないか。
ある大企業の知財部門幹部OBは、「大量出願のクロスライセンス戦略とかいろいろ言われるが、高度成長期には、それは日本オリジナルの戦略の柱としてあった。知財権の行使やライセンス交渉もシビアだった」と振り返る。今はその柱がない状態だ。
現実には、10年ほど前にある大手電機関連の知財部幹部が液晶パネル事業などの権利侵害に関して「アジア企業を泳がせているが、そろそろ各社一斉に回収に行くぞ」と息巻いていたが、結局日本勢は衰退した。いま欧米のオープンイノベーションやオープン&クローズ戦略などの知財戦略を追いかけているものの、それでは遅い。トヨタ自動車が果敢に燃料電池で仕掛ける一方で、自動車業界は自動運転や交通制御でIT(情報技術)産業の攻勢を受け、すでに戦いは次の場に移っている。