個人の特徴や属性を分析した「プロファイリング情報」がデータ化・転売・漏洩(ろうえい)されている。流通先は日本の枠を超えて海外にも徐々に広がる。「個人情報保護法改正案」が閣議決定され、個人識別や復元ができない匿名加工情報の整備、個人情報データベースなどの提供罪、個人情報保護委員会の設立、海外第三者への個人情報提供での規定整備-など保護強化策が掲げられた。
知的財産法の権威である東京大学先端科学技術研究センターの玉井克哉教授は閣議決定後に開かれた情報通信学会情報知財研究会の席上、「例えば欧州連合(EU)にはEU市民の個人情報の移転規制があり、それに(日本の個人情報保護環境が)認められないとEUにある日本企業の社員情報や顧客情報を日本へ持ち出せなくなる。法改正の行方を見守りたい」と問題を提起。「民間レベルで規格や標準を作るとか、ブランド力で一定の信用力を得るなど法律を補うような民間独自の動きが出ることにも期待している」と話した。例えばクラウドでの個人情報保護には国際規格「ISO27018」がある。
一方、「不正競争防止法改正案」も閣議決定され、営業秘密保護が強化された。個人情報と営業秘密は非常に近い分野で、例えば職員情報や顧客情報は営業秘密の一つに入る。改正案は大幅な法定刑引き上げや非親告罪化、営業秘密の海外不正持ち出しでの罰金を重くすることなどを定めるとともに、企業システムなどへのサイバー攻撃による搾取などの未遂、不正収得と知った上での転売、海外サーバーでの窃取-などの処罰範囲が整理された。
これまで知財の世界では発明者や出願人の氏名や名称、住所といった個人情報が開示にされている。発明内容に日付をつけて公開する特許公報だ。職務発明制度を敷く大企業の場合、住所、名称は法人にしてあることが多いが、中小・ベンチャー企業などでは個人がそのまま掲載されているケースが少なくない。