2015.1.5 05:00
今から約150年前に、大河ドラマ『花燃ゆ』の準主役でもある吉田松陰が20代でこの世を去った。関東大震災からの復興を主導した後藤新平は「金を残すは下、事業を残すは中、人を残すは上」と喝破したが、松陰ほど「人」を残した先人はまれであろう。
列強の植民地になりかねないとの危機感の中、松陰は命がけで行動を起こし、その想いを松下村塾生に伝えた。技術やノウハウを伝える学校は当時も今も世界にあふれているが、「魂に火をつける教育」は容易ではない。私も少人数制のリーダー育成塾を主宰して4年が経過したが、カリキュラムの網羅性よりも覚悟に基づく教師の伝達力が肝心だと感じている。
松下村塾などで覚悟の教育を受けた幕末の志士たちは、ピンチをチャンスに変えて日本の近代化を成功させた。私は留学時に、ハーバード大ケネディスクールの開発経済コースで明治維新の講義を聴講したが、確かに客観的に教わると「世界史上の奇跡」「全ての途上国に勇気を与える改革」などと絶賛される理由がよくわかる。
政府を一変させ(明治新政府)、税を米納から金納にし(地租改正)、廃藩置県を実施し…と、無数の「痛みを伴う改革」を短期間に断行することは常識的には不可能だ。昨今の行革や農協改革や数%の消費増税をめぐる争いが可愛く見える。
なお、諸改革に埋もれて1871年に郵便制度が誕生しているが、今から10年前の2005年にその民営化をめぐって劇的な総選挙があった。現代的には大事件だが、歴史的には維新とは比べるべくもない。