検察審査会の「起訴相当」議決を受け、東京電力福島第1原発事故の再捜査が始まる。だが、災害が引き金となった事故の刑事責任認定は難しく、新証拠が浮上する公算も小さいため、再捜査でも立件は相当困難な状況だ。ただ、東京第5検察審査会は捜査結果を否定する形で旧経営陣を厳しく指弾。検察は民意も意識しながら難しい捜査を展開することになりそうだ。
「個人の責任」問えず
「率直に言って意外な議決。捜査は尽くしており、今後どう捜査を展開するか頭が痛い」
議決を受けて検察幹部は心中をこう吐露し、再捜査の難しさを強調した。
検察の捜査は「事故を予見できる可能性があったか」「事故を回避できたか」という2点が重視されたが、浮かんだのは津波による全電源喪失が現実的な危機として共有されていなかった実態だった。
国の地震調査研究推進本部(推本)は「三陸沖から房総沖でマグニチュード8.2前後の地震が発生する可能性がある」と公表し、東電自身も「福島沖で同規模の地震が発生した場合、原発に15.7メートルの津波が到来する」との試算を得ていたが、捜査の結果、東電内部でともに参考程度の扱いにとどまっていたことが判明。「旧経営陣らの事故の予見は困難」と認定した。
事故を回避できたかについても、「試算の後、対策工事を着工しても震災までに工事が完了したか疑問」と結論づけた。