総務省の事務次官に、消防庁長官の大石利雄(61)が就任する。1年間「待った」をくらった末の本省復帰に、旧自治省OBは胸をなで下ろす。しかし、この「奇妙な人事」(自民党参院議員)の裏には、官邸による“霞が関支配”を盤石にする巧妙な仕掛けもみてとれる。キーワードは「1年待て」だ。
「1年待ち」を要請
昨夏、総務審議官だった大石は次期事務次官の本命だった。だが、蓋を開けてみると、上がりポストの消防庁長官だった岡崎浩巳(61)が事務次官に就任。後任の長官に大石が転じる逆転人事となり、総務省幹部やOBも驚きを隠さなかった。
そして今春、官邸が箝口(かんこう)令を敷くなか、次期総務事務次官に大石の名前が浮上した。7月には省内でも噂が飛び交い、幹部からは「消防庁長官が次官待ちポストになったね」などと軽口も聞かれた。
総務省で繰り広げられた異例の幹部人事の黒幕は官邸だった。故梶山静六を政治の師匠と仰ぐ官房長官の菅義偉は、昭和62~63年に自治相だった梶山に秘書官として仕えた岡崎とは昵(じっ)懇(こん)の仲でもある。
関係者によると、昨夏、当時事務次官だった小笠原倫明(60)と総務相の新藤義孝が推薦した大石事務次官案を、菅官房長官は差し戻して改めて候補を出させた上で、岡崎を選んだという。