【どこまで進む? 再生可能エネルギー】九州大学教授・秋葉悦男氏

2014.6.16 05:00

九州大学教授・秋葉悦男氏

九州大学教授・秋葉悦男氏【拡大】

 ■「水素社会」で賢いエネルギー利用実現

 4月に閣議決定された国のエネルギー基本計画では、「水素社会の実現に向けて取り組みを加速する」と水素エネルギーの導入加速が盛り込まれた。九州大学の秋葉悦男教授は「水素社会はエネルギーを賢く使う社会そのもの」と強調する。

 --水素貯蔵材料の研究に取り組んでいる

 「水素は気体を液体にすると体積が800分の1になるが、ある種の材料に吸蔵させると1500分の1と極めてコンパクトになる。来年に商業販売される燃料電池車は高圧水素タンクを搭載するが、水素を安価に貯蔵できる材料を利用できれば、ガソリンタンク並みに小型化できる。研究しているのは希土類とニッケルが中心の材料だが、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトとして、自動車メーカーも参加して貯蔵材料の研究が始まっている。燃料電池車がバス、トラックにまで普及していくには、安価な貯蔵材料が不可欠だ」

 --水素は大量貯蔵、輸送用途も考えられている

 「東日本大震災後、負荷平準化のため水素の形で電力貯蔵する定置式の貯蔵材料の研究が盛んになり、研究者の間では自動車用と定置式の2つがターゲットになってきた。定置式では、鉄チタン合金が室温下、重量比で2%の水素を吸蔵できる。これが本命中の本命だ」

 --水素社会とはどのような姿か

 「水素はさまざまなエネルギーからつくられる2次エネルギーで、燃焼して水しか生成しないため最もクリーンだ。電力と相互変換できる唯一の燃料で、その媒体として水素は必ず必要になる。水素社会とはエネルギーを賢く使う社会そのものだ」

 --水素を製造する原料はどうか

 「現在の燃料電池用水素は化石燃料から抽出しているが、川崎重工業がこれまで未利用だった褐炭から水素を製造する実験をオーストラリアで実施しているように、新しい資源から水素を製造する試みも始まっている。次の段階として、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーから製造し、将来的には水の電気分解に向かうだろう。どの段階でも、原料、製造方法、製造するためのエネルギーをどうするかという3つの要素をクリアにしていく必要がある」

                  ◇

【プロフィル】秋葉悦男

 あきば・えつお 東京大大学院理学研究科博士課程修了。1979年東京工業試験所(現産業技術総合研究所)入所。産総研エネルギー技術研究部門副部門長などを経て、2010年から現職。再生可能エネルギー協議会分科会7(水素・燃料電池)リーダー。北海道出身。62歳。

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