一部の大学で訴訟対応施策が検討されている。大学の発想を根本的に変える動きにつながるか、注目される。
ある公立大学の知財活用担当者は「訴訟などの係争関連予算を計上することを検討課題にあげている」と打ち明ける。理由は特許出願は排他的権利を得る行為であり、その権利の防衛を自ら担保できなければ、特許出願そのものを否定することになりかねないからだ。
米国と比較すると日本では大学の知財収入が非常に低い。産学連携などにおける特許関係実績で2012年度トップの京都大学が約2億6000万円なのに対し、米ニューヨーク大学が受け取ったライセンス収入はライフサイエンス分野だけで約1億7900万ドル(約184億円)である。
背景には、日本では大企業との共同出願が多いことや大学の特許技術を使ったベンチャー企業の上場成功例が乏しいことなどがある。しかし、米国のある国際知財取引業者は「日本の大学は法的対応能力が低く、侵害されても訴訟できない影響が大きい。権利行使を放棄した特許は“権利フリー”となる。そもそも価値がなく流通しないし、商談の対象にはならない」と指摘する。
大企業の知財部門から転職したというある国立大学の知財担当者は「大学に係争や訴訟の予算はない。先端的な研究をしている大学でも、特許の本質はいまだに理解されず、評価するレベルにない」と手厳しい。