【アジアの目】ウクライナ危機に見る中国の思惑(上) (1/3ページ)

2014.4.3 05:00

 ■領土問題 台湾の動きを懸念

 ロシアによるクリミア自治共和国の併合という事態は、中国はじめアジア各国にも衝撃を与えた。元フランス外交官のチェン・ヨ・ズン氏は「今回の事態は中国にとっても大きなジレンマ」と分析する。同氏の寄稿を2回に分けて掲載する。

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 ウクライナ危機によるロシアと欧米との確執は、東西冷戦の再来を引き起こす勢いで世界を再び不安定な状態に陥れた。この1年間、北方領土問題の解決や天然ガスを中心としたシベリア資源開発などを目指してプーチン大統領に急接近した安倍晋三首相の対露外交も、この危機で急ブレーキがかかった格好となった。今回のウクライナ危機を「領土」と「天然ガス」の視点から分析したい。

 ◆武力による現状変更

 ウクライナ領土であるクリミアに対するロシアの執念をみると、北方領土で果たして簡単に日本に譲歩するか甚だ疑問を抱かざるを得ない。

 その上、クリミア奪取にみられる領土の「力による現状変更」がこうもやすやすと許されれば、中国との領土紛争を抱えている日本にとっては「力による」尖閣諸島支配の「現状変更」という悪夢が一段と現実味を帯びてきた。

 「力による現状変更」が「前例」となることに懸念を抱くのは日本だけではない。過去半世紀、常に中国に統合される脅威に直面している台湾も、この前例を盾に中国が「力による現状変更」を迫るのではないかと不安が高まっている。不安を如実に物語るのは馬政権の対中接近策に反対する台湾の学生の激しいデモと実力行使である。

 「武力による現状変更」の前例に戦々恐々なのは、中国と南シナ海での領土紛争を抱える東南アジア諸国も同様である。

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