■西郷国際特許事務所所長・弁理士 西郷義美
「尖閣諸島(沖縄県石垣市)は昔から俺のものだ」と中国は言いだしている。一方、当然ながら日本政府は「領土問題さえ存在しないのだ」との一貫した返答をしている。この問題は、中国に言わせると「日本政府が尖閣諸島を国有化したから」問題に火が付いたのだという。
ところで商標での話だが、この「尖閣」の商標を取って、「私」有化した日本の御仁がいる。本土の人間がとんがり帽子のような山の形状をした島の絵を下地に、それを覆うように尖閣と大書した商標権を海産物などを指定商品として取得した。
それを知った沖縄の漁業関係者は驚きかつ怒った。島は俺のものだと中国には言われるし、その上、その島名さえもよそ者に取られてしまっては踏んだり蹴ったりだと。しかし、実はこの尖閣の名称は商標権化できない。より正確には権利化できていない。あたかも尖閣の字面が権利化できたように見えるが「尖閣」部分の権利主張はできない。地名は顕著性を有しない。つまり、その商標を使ったところで代わり映えしないから誰の商品か分からないため、商標権を与えないのである。
このような取り方で、見せ掛け的に「尖閣」が取れたようにし脅かす手口はよくある。出願人や代理人が知らずに、あるいは知っていて、見て見ぬふりをしてやっているかは定かではない。一部で、この権利主張ができない範囲について無知であることはよく見受けられる。