■他の省庁・機関と積極的に連携
--中小企業の知的財産に対する意識や課題の対応力は高水準とはいえないが支援の現状をどうみているのか
「例えば弁理士は個々の現場でがんばっているだろうし、特許庁は中小企業のために全国で実施中の知財総合支援窓口に関与している。だがマクロ的に見ると、おそらく関与の仕方は非常に限定的なのではないか」
--具体的には
「一昨年、中小企業経営力強化支援法が施行され経営革新等支援機関として専門能力のある法人や個人ら認定が始まった。これまで認定された約2万件の中に弁理士は一人もいない。知財支援に関してはそれが実態だ」
--知財支援の認知度が低いためか
「問題はもっと根本的なところにある。特許出願は中小企業の主要な経営課題ではない。市場参入、資金調達、大企業との取引といった相談の中で知財を捉える必要がある。問題が明確に捉えられれば支援しやすい。特許庁の中小企業支援もそこに課題がある」
--そうなると相談を受ける側が中小企業経営を理解し、専門の体制も必要になるが
「ユーザーの目にどう映るかは大事だ。経営課題も含めて支援してもらえるのか、誰が支援してくれるのか、アクセスしやすいか-。そういう視点で特許庁での支援体制を考える必要がある。一つのモデルは東京都の手法だ。東京都中小企業振興公社の下に東京都知的財産総合センターを設け、多様な人材を置いて取り組んでいる」
--ユーザーありきの支援が大切になる
「それには経営支援の中で知財支援がどう関与して成功したか、個別事例として見えるようにすることが(ユーザー、支援者双方に)非常に重要だ。役所言葉でまとめるときれいに見えるが、現実は違う。知財支援にいたったきっかけや成功要因は何か、リアリティーが必要だ。最も大事なことは『こうすればうまくいく』という手本を分かりやすく伝えることだ」