小野田さんの戦いは終わった。91歳の生涯を貫いたのは「誇り」と「不撓不屈(ふとうふくつ)」だった。
40年前のあの衝撃は、いまも鮮明に記憶している。ルバング島での初めての会見は、私たち報道陣への敬礼で始まった。質問にはひとり一人と正対し、よどみなく答えていった。手製の軍服は繕われ、ボタンもしっかりついていた。
毅然(きぜん)とした立ち振る舞いは何なのか。謎が解けたのは、28年後。再会した小野田さんは「大切なことは“らしさ”です。“らしさ”とは自分の役割が何であるかを把握し、責任を持って遂行すること」と話した。孤独な戦いを続けながら「日本人の誇り」に通じる“らしさ”を磨き、表現したものだった。