家庭のパソコン用プリンターと銀粒子の入ったインクを使い、電子回路の基板を簡単に作製する技術を東大の川原圭博(よしひろ)准教授(情報通信工学)らのチームが開発した。従来の方法と比べて作製時間や機器の費用を百分の一程度に削減でき、一般の人でも手軽に電子工作ができるようになる。
銀粒子インクは直径数十ナノメートル(ナノは10億分の1)の銀粒子が含まれ、電子回路の微細な配線に使われている。回路基板はこのインクを約800万円の産業用プリンターで数時間かけて印刷した後、加熱処理して作製するため、専門家でないと作れなかった。
川原准教授らは加熱処理が要らないタイプの銀粒子インクに着目。これを家庭用のインクジェットプリンターに使い、紙やフィルムなどの柔らかい素材に手軽に素子を印刷することに成功した。
従来法と比べて精度はやや劣るが、平面状のタッチセンサーや通信アンテナも作れるという。
川原准教授は「研究や産業分野で電子回路を気軽に試作できるだけでなく、ペーパークラフトに組み込むなど、個人の工作や理科教材にもすぐに活用できる」と話している。(草下健夫)