【10月20日は新聞広告の日】(2-1)消費税増税と広告費の見通し

2013.10.18 05:02

 今年度の新聞週間代表標語に選ばれた「いつの日も 真実に 向き合う記事がある」には新聞という媒体ならではの信頼性や社会性が表されている。そういった新聞の特徴を生かして企業ブランドを高める広告は数多い。フジサンケイ ビジネスアイは10月20日の「新聞広告の日」を前に、新聞広告の今後の可能性について、電通総研とともに探った。

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 ■消費税増税のインパクト

 2013年2月に電通総研/電通が発表した「2012年 日本の広告費」では、12年暦年の総広告費は5兆8913億円、前年比103.2%であった。リーマンショックに端を発する世界同時不況、そして東日本大震災による影響で4年連続で前年比割れを記録していたが、5年ぶりにプラスに転じた。中でも新聞広告は6242億円、前年比104.2%と、マスメディア4媒体の中ではもっとも高い伸び率を記録し、それに伴い、新聞社各社の広告収入は増加した。

 新聞広告費に関していえば、00年に1兆2474億円あったものが減少し続け、およそ半分にまで縮小してしまった。それでは、減少傾向に歯止めがかかったのだろうか?

 日経広告研究所の広告費予測によれば、13年度の総広告費は前年度比3.4%増と予想している。今年の前半はアベノミクスの影響はまだ表れず低迷していたが、夏以降、テレビのスポット広告市場を中心に活況を呈している。図にもあるように、日本の広告費は名目GDPとの相関が非常に高く、ある意味では景気の指標の一つでもある。

 13年度の新聞広告費の予測は0.2%減と微減である。その数字から推測すれば、新聞広告費の減少傾向は一段落したといえるのかもしれない。ただ、今後の中長期的な広告費についての予測は難しい。景気の長期的な推移は、シンクタンクやエコノミストから発表されているが、大きく上向く、という強気な予想はなく、低成長が続くと考えられているので、広告費全体が大きく増えるとは考えにくい。リーマンショックのような経済危機、あるいは、東日本大震災のような自然災害など予想できないものもある。そういった時の影響については予測できないが、それ以外の要因で大きく変化することは考えにくいことも確かである。

 その一方で、大きな影響要因である消費税増税を14年4月1日から実施することが政府より発表された。一般的に、消費税増税前は駆け込み需要が発生し、増税後は消費が冷え込み、景気後退局面になるといわれている。先ほどの広告費とGDPの相関を考えると、増税前の広告市場は活況を呈し、増税後は一時的な冷え込みが来ると考えられる。あるシンクタンクでは、13年の第4四半期から増税直前の14年の第1四半期にかけて、広告費で1%内外の押し上げ効果があるのではと推測している。主に影響するのは民間最終消費支出と民間住宅投資である。具体的には、自動車、高級ブランド品などの高額商品、住宅では新規の住宅建設、購入、リフォーム、住宅関連である家具といったあたりの消費が増大すると予測されている。

 実際、東京五輪招致決定の影響もあって、湾岸地区の新築マンションの人気は非常に高く、また、不動産広告も活況を呈しているが、物件によっては瞬く間に売れてしまい新規の広告をする必要がなくなって、トータルでは広告出稿が増えなかった、という残念な例もある。いずれにせよこういった駆け込み需要で市場は好況となるが、問題は増税後の冷え込みである。政府は景気腰折れを防ぐための経済対策を打ち出そうとしているが、その効果でGDPを押し上げ、広告費にもプラスの影響を与えてくれることを期待したい。

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 ≪ネット選挙解禁を振り返って≫

 ■ネットメディアの進出

 今年7月21日に第23回参院選の投票があった。4月に公職選挙法改正法が成立し、インターネットを使った選挙運動が解禁され、さまざまな意味で注目された選挙であった。ネット活用に積極的な議員は自らのホームページやブログ、あるいはソーシャルメディアを利用して以前から積極的に情報発信してきた。従来の公職選挙法では、選挙期間中はこれらの手段を利用することが禁じられていたが、ネットによる選挙活動が自由にできるようになったということである。多くの政党や候補者がソーシャルネット上のアカウントを新たに取得したり、あるいは所属全候補者にタブレット端末を配ったり、また、ネットのみで選挙活動をする候補者が現れたり、いろいろな面で従来とは違った選挙でもあった。

 米国の大統領選挙と同様ビッグデータの活用、ソーシャルメディアの活用という点は注目されたが、まだまだ限定的でしかなかった。ただ、そのなかでも、「Yahoo! JAPANビッグデータレポート」チームは投票直前にかなり精度の高い議席予測(http://event.yahoo.co.jp)bigdata/senkyo201307/を参照)をしたことで話題になった。

 もっとも今回の選挙自体、投票結果が見えていたということで、投票に行かなかった人も多かった。浮動票などの動向については、今後選挙を重ねていくことでさらに精度の高い予測モデルが出てくることも予想できる。いずれにせよ、従来マスメディアが独占していた議席予測にネットメディアが進出してきたということは、特筆すべき事である。

 注目すべき点は、今回の選挙にネット系のメディアが積極的に関与してきたことだ。前述のYahoo!をはじめ、大手のネット系メディア、ポータルサイト、さらには、ネットに関わる企業などが選挙に関して政党、候補者にさまざまなアプローチをしていた。実際こういったネット企業の選挙への関わりは既に前回の衆議院選挙から顕著だったが、今回はさらに多くの企業が参入し活況を呈したということでもある。

 この目的は企業によってさまざまであろうが、一つには、政党などの選挙に関わるネット広告の獲得が考えられる。ネット上での選挙活動が増えれば当然のことながら、そこでの広告ニーズは増加するわけであり、ネット広告獲得に向けてさまざまなアプローチが試みられることは容易に想像できる。実際には今回の選挙は結果がある程度予見されていたので、全体的な広告費の投下は以前に比べてそれほど多くはなかったが、今後激戦が予想される選挙であれば、ネットへの広告費の投下が増加することが予想される。

 さらには、ネット上での選挙活動が着実に根付き、有効だと認められるようになってくれば、従来のマスメディアに投下されてきた広告がネットにシフトする可能性は十分に考えられる。

 ネット選挙解禁元年の今回の選挙では大きな変化はなかったが、今後の新聞広告への影響は注目していきたい。

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