【論風】知財評論家(元特許庁長官)・荒井寿光 急激に進む知識社会への移行 (1/3ページ)

2013.10.17 05:00

 ■第2世代の知財立国運動を

 日本は2003年に世界で最初の知財基本法を制定した。これに基づき約50本の知財関連法が新たに制定されたり、改正されて、知財関連法が体系的に整えられた。首相を本部長とする知財本部が設置され、毎年知財推進計画が策定され、各省の垣根を越えて産学官の協力が進められている。知財高裁の設置は戦後最大の裁判所改革だ。

 このような日本の第1世代の知財戦略は世界のモデルとなっている。それから10年。歴史的に、現在は工業社会から知識社会への移行の最中におり、知財を取り巻く環境は激変している。

 ◆利益確保へ手を打つ各国

 第1に、グローバリゼーションの進行。知財はそもそも形がなく、グローバリゼーションの影響を一番受けている。知財制度は今まで各国がバラバラに対応する国別主義を取ってきたが、これからは世界主義に移行しなければならない。第2に、技術革新。IT革命はめまぐるしく進み、京都大学の山中伸弥教授が開発した人工多能性幹細胞(iPS細胞)は再生医療革命を起こすと予想されている。技術革新は知財制度に法的安定性よりも法律革新を求めている。第3に、投機マネーの流入。経済活動における知財の役割が重要になるにつれ、投機マネーが流入し、知財の相場を釣り上げている。特許を買い集め、大企業などを相手に高額な訴訟を起こすパテント・トロールがやっかいな問題となり、米政府も対策に乗り出している。

 世界各国はこのような潮流に対し自国の利益を守るため手を打っている。米国は特許法を大改正して先願主義に移行し、欧州は14年に欧州統一特許裁判所を設置することになった。中国は発明奨励を進め、世界一の特許出願大国になったが、同時に特許訴訟件数も世界一となり、外国企業からは「知財のチャイナリスク」と恐れられている。

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