2013.10.14 05:00
■危ない特許からの防衛策が必要
産業競争力強化へ向けて、知財の観点から何をすべきか。1999年、米国に設立された技術・特許の世界的な移転・オープンイノベーション関連サービス会社「yet2.com」の日本法人イェットツー・コム・アジアの藤井秀行社長に聞いた。(知財情報&戦略システム 中岡浩)
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埋もれた知財などの活用を促進するため、国策の知財支援ファンドが活動を始めたが、これまでのグローバルな活動の知見からいえば、すでに休眠化した企業の知財を活用し、成功した事例は極めて少ない。
さらに技術と特許では、やれることは違ってくる。
例えば技術ライセンスでモノを作るなら、サポートのための技術者が必要になる。長期間使っていない技術ならば、技術者はすでに存在していないケースもある。
特許ライセンスの場合もモノを作るなら、技術者の支援が必要になるし、訴訟をしなければならない場合もある。国策会社が権利行使までやれるのか注目しているが、そうなった場合、訴訟で利益獲得を狙うNPEs(知財係争で収益を上げる企業)との違いが不明確になることが懸念される。韓国の国策知財活用会社のように自国企業のために戦えるだろうか。
米国では特許ビジネスが先鋭化したため、NPEsの封じ込め政策が打ち出されつつあるが、企業自身危ない特許から身を守る対策は怠っていない。紛争の芽となりそうな特許や対抗特許をひそかに購入している。米国には会員制共同防衛サービス会社も生まれ、業績好調だ。
余り知られていないが、日本企業にも危ない特許を何とかしたいというニーズは当然あり、水面下で購入している大企業は少なくない。実は弊社でもパテント・アクイジション・メンバーシップ(PAM)サービスを提供し好評を得ている。防衛上の特許購入共同管理サービスで、独禁法には抵触しない。国策の知財支援ファンドがあるならば、危ない特許を公的に買収して日本企業を危険から防衛する視点があっていいのかもしれない。
休眠化してしまう背景には、日本的な減点主義の人事考課が影響している。放出した技術や特許が他社で大事業に成長したり、NPEsの手に渡って紛争の種になったりした場合、担当者の責任が問われる。加点主義になれば知財流通はもっと活発になるはずである。(談)