【ビジネスアイコラム】
トヨタ自動車がセダンタイプの燃料電池車(FCV)を2015年に発売する計画を打ち出す一方、家庭用燃料電池「エネファーム」は既に4万台以上が国内に普及。燃料電池は身近な存在となってきている。しかし、課題として相変わらず残っているのが燃料である「水素」だ。FCVもエネファームも、天然ガスなどの化石燃料を改質して水素を生成しているからだ。
こうしたなか、ビール大手のサッポロビールはサトウキビ残渣(ざんさ)(搾りかすのバガスと葉や茎)を原料に、微生物の発酵作用によって水素を生成する基礎技術を開発。ブラジルのエネルギーメジャーのペトロブラスと技術提携し、09年後半からブラジルで実証を重ねている。微生物が残渣を食べて水素を生成するため、「天然ガスや石油に依存しない、再生可能エネルギーとしての水素」(サッポロ幹部)という位置づけだ。
ちなみに燃料電池とは、水素を酸素と化学反応させて電気を発生させる発電装置。水素を燃料に電気をつくる“小さな発電所”である。排出されるのは水だけであり、二酸化炭素を一切出さない。『水の電気分解』では、水に電圧を加えることで水素と酸素とに分解した。燃料電池はこの逆のメカニズムである。
水素の取り出しは、天然ガスや石油、最近ではメタンハイドレートといった化石燃料のほかにも、海水を電気分解したり、製鉄所のコークスガスから分離するなどいくつか方法がある。それでも、天然ガスなどからの改質に頼るのは、取り出せる水素の純度が高く燃料電池内部の電解質膜や触媒を傷つける心配が少ないためだ。さらにコスト面でも化石燃料は優位である。