世界初!横揺れ+縦揺れも減衰「3次元免震」 阿佐谷のマンションに建築学会賞

2012.4.25 10:43

 東日本大震災の直前に完成し、偶然にもその性能を実証した、世界初の3次元免震マンション「知粋館(ちすいかん)」(杉並区阿佐谷南)が平成24年の日本建築学会賞(技術部門)を受賞した。同学会は3次元免震を「世界で初めて実用化レベルの技術まで高めた」功績を評価した。

 設計した構造計画研究所(中野区)によると、既存の免震構造ビルは、横(水平)方向の揺れを抑えるだけだが、直下型地震では縦(垂直)方向の揺れが強くなる傾向にあり、精密機器など建物内部にある設備などへの影響が心配されている。縦揺れの免震は、コンピューター室や美術館などで部分的には利用されているが、建物全体を縦方向も合わせた3次元で免震対策するものは現時点で、同館のみだという。

 知粋館で採用した3次元免震システムは、同社が清水建設などと開発。床が傾かないように水平を維持しながら、縦方向の揺れを減衰させる機構を採用したのが特長だ。

 設計上は、震度7級の直下地震に対して、横方向の揺れを8分の1、縦方向の揺れを3分の1に減衰させる。震度7に相当する揺れでも震度3~4程度の揺れに抑えるという。ただ、東日本大震災は震源から距離が遠く、同館付近の震度は5弱。長周期成分の揺れが中心で、免震効果は横揺れ44%減、縦揺れ28%減だった。

 免震装置のコストは同館の場合で8千万円。同社は今後、マンション向けにはコストダウンを図るとともに、コンピューターのデータセンターや政府の重要拠点などへ3次元免震システムの採用を働きかける。

 知粋館は昨年3月3日に完成し、現在は3階建て8戸のうち6戸に構造計画研究所の社員(家族)が入居している。