民間有識者でつくる「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」(委員長・北沢宏一前科学技術振興機構理事長)は27日、東京電力福島第1原発事故の調査報告書を発表。日本の原発をめぐり長年にわたって醸成された「安全神話」が事故の遠因となったと厳しく指摘した。
委員会は元新聞記者が理事長を務める財団法人が設置。科学者や弁護士など6人からなる有識者委員会の指示のもと、約30人の研究者や弁護士、ジャーナリストらが調査を行った。
事故調は、官邸で事故対応にあたった菅直人前首相をはじめ、原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長らから聴取した。東電は聴取に応じなかったという。
報告書は、本来は事業者などが行う事故対応に官邸が直接乗り出した経緯を分析。複合災害への備えを欠くマニュアル、危機対応への政治家の認識不足、首相のリーダーシップのあり方などに問題があったとした。
事故の遠因とした原発の「安全神話」は、安全性への疑念を否定するために事業者などが「絶対的な安全性」を強調することで広く受け入れられたと指摘。規制当局や電力事業者、原発立地を受け入れてきた自治体住民らによる「原子力ムラ」に加え、「原理原則に基づくイデオロギー的反対派」も自由な議論を妨げ、逆に「安全神話」を強化する土壌を提供した、と述べた。