東京ディズニーシー(TDS、千葉県浦安市)が4日、開園20周年を迎える。東京ディズニーランド(TDL、同)とともに国内テーマパーク市場を牽引(けんいん)し、海外ディズニー施設の中でも成功例として存在感を放つ。ただ新型コロナウイルス感染拡大に伴い、運営するオリエンタルランドは上場後初の赤字に転落するなどかつてない厳しさに陥った。それでも同社は設備投資に積極的で、令和5年度にはTDSに新エリアを誕生させるなど、パークの魅力を磨き続けている。(加藤園子)
新エリアに2500億円投資計画
海の伝説を題材にしたTDS。「大人っぽさ」や「ロマンチック」を鍵に、「ファンタジー」なTDLとの相乗効果を生み、コロナ禍前の年間入園者数は、3000万人超。TDL開園当初の約3倍の伸びで、新たなパーク需要を開拓した。
遊園地・テーマパーク市場でその存在感は圧倒的だ。レジャー白書によると、両施設を合わせた規模は市場の4割超を占める。6都市にあるディズニーパークの中でも米国の2施設に次ぐ入園者数とされる。
世界のディズニー施設の中でも日本が成功した理由のひとつとして、レジャー産業に詳しい桜美林大の山口有次教授は「日本文化にマッチしたのでは」と分析する。海外でキャラクターやアニメは子供向けとされがちだが、日本では大人の関心も高い。全年齢層で楽しむ施設として定着したのは「世界的にも珍しい」という。
ただ足元は厳しい。コロナ禍による入園者数や開園時間の制限が重く響き、令和3年3月期の入園者数は756万人と過去最低。オリエンタルランドの連結決算の最終損益は541億円の赤字で、上場以来、通期で初の赤字となった。
それでも「体験価値の向上」(同社)のため設備投資に積極的だ。TDSの新エリア「ファンタジースプリングス」には約2500億円を投じる計画で、2年3月期の投資額は約1400億円と過去10年で最高。コロナ禍の3年3月期は減少したが2年3月期に次ぐ額で、売上高に占める投資額は5割を超えた。
オリエンタルランドの吉田謙次社長は新エリアを「再成長に向けての希望の星になる」と強調する。山口氏も同社の方針に理解を示し「レジャー需要は眠っているだけで消えていない。制限が終われば需要が爆発するのでは」と“夢の国”の再興を予測する。
USJ、人気キャラとのコラボで成長
TDSと同じく今年20周年を迎えたユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)は、人気キャラクターとのコラボレーションで成長。今年、任天堂の世界を再現した新エリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド」をオープンし、話題を集めている。
TDL、TDSやUSJに代表されるように、近年はテーマ性の強い施設が際立つ。人気玩具レゴブロックのテーマパーク「レゴランド・ジャパン」(名古屋市)や、人気キャラ「ムーミン」のテーマパーク(埼玉県飯能市)が相次いで開業。昨年閉園した「としまえん」(東京都練馬区)跡地には、映画「ハリー・ポッター」のテーマパークの開園が控えている。
テーマが明確な分、アトラクションのほか装飾や企画、グッズなど全方向に展開しやすく、収益アップも狙える。オリエンタルランドが先駆けたマーケティング手法で、非日常を求める入園者の心をつかんだ。
遊園地やテーマパーク市場は、令和元年まで拡大していたが、テーマ性に乏しい中小の施設は苦しんでいた。さらにコロナ禍の影響で、市場全体の令和2年の売上高、入園者数はともに前年比で6割減となった(経済産業省統計)。中小施設には厳しい追い打ちで、今後は大規模施設との差がさらに広がるのではないかと見る向きもある。
TDSは4日からアニバーサリーイベント「タイム・トゥ・シャイン!」を開催する。キャラクターの水上ショーや特別グッズの販売などで20周年を祝う。