【経済#word】「ゲーミフィケーション」
ゲーム開発に生かされてきた人を楽しませるノウハウを生活習慣の改善などに役立てる「ゲーミフィケーション」の取り組みが本格化している。得点や記録といったゲームに不可欠な要素で継続することが難しい運動などの楽しみを向上させる仕組みで、企業の人材育成などにも活用されている。ゲーミフィケーション関連市場は世界で4兆円近くに達するとの試算もあり、ゲーム産業が集積する日本経済の追い風になるとの期待もある。
スマホ普及で注目
ゲーミフィケーションとはゲームで活用されているさまざまな仕組みを別の分野に応用すること。英語の「ゲーミファイ(ゲーム化)」という言葉が由来だ。ゲームにはプレーヤーを熱中させるノウハウが注ぎ込まれており、「依存症を招く」と否定的にみられることもある。しかしその仕組みを運動や学習に生かせば、ゲーム以外の分野で前向きな効果を得ることができるとも期待される。
ゲーム業界関係者は「ゲーミフィケーションという言葉自体は10年ほど前からある。しかしスマートフォンが広い世代に行き渡り、ゲームがより身近になったことで注目度が高まった」と話す。
ゲーミフィケーションの代表例として話題を集めたのが2016年に配信が始まったスマホゲーム「ポケモンGO(ゴー)」だ。スマホの衛星利用測位システム(GPS)を活用して、歩けば歩くほどゲーム内での「強さ」を増すことができるといった仕組みを採用。毎日遊ぶことで特典がもらえたり、他のプレーヤーと協力して目的を達成できたりといったゲーム要素で楽しみながら、歩くという運動が習慣になるとして世界中で大流行した。
保険・製薬会社も
ゲーミフィケーションへの注目はこれまでゲームとは縁遠かった企業がゲーム会社と連携する動きを生み出している。
第一生命ホールディングスは6月、スマホ向けゲーム大手のDeNAとヘルスケア関連サービスについて業務提携したと発表した。女性向けの情報サイトやダイエット用アプリの開発・運営を行う。運動など健康になる行動を習慣化できれば、消費者は保険料を安くできる一方、保険会社は支払う保険金を抑制することができる。
ここで生かされるのがDeNAのノウハウだ。身長や体重、摂取カロリーなどを記録すると、その人にあった運動の動画などを紹介し、アニメキャラクターが利用者を励ましたり、体重が減っていく様子を分かりやすく表現したりといった工夫がこらされている。DeNAは「数カ月にわたって健康になる習慣を身に付けてもらうような仕組みを取り入れている」と説明している。
また東和薬品とバンダイナムコ研究所は薬の飲み忘れを防ぐ服薬支援ツールを開発中。飲み忘れで無駄になった残薬が医療費高騰の一因となっており、京都大などと実証実験を重ねている。