日本航空は7日に発表した令和8年3月期までの5年間の中期経営計画で、6年3月期に新型コロナウイルス禍前の利益水準まで戻す目標を掲げた。ただ、この目標は、格安航空会社(LCC)事業などの強化やワクチン接種の普及による国内・国際旅客の回復が前提。「どこでワクチンの効果が出るのか」(赤坂祐二社長)にかかっており、綱渡りの側面は否めない。
「(JALブランドの)フルサービスキャリア事業の依存度を減らし、高い成長が見込めるLCCやマイルなど非航空事業の成長を図る」。赤坂氏は会見でこう強調した。JALブランドの航空事業はコロナ禍で出張などの法人需要が減少。コロナ後もオンライン会議の普及などで以前の水準に戻るのは困難とみて、主に観光需要向けのLCC事業を強化する方針を示した。
コロナ後の中国からの訪日客集客を狙い、6月に連結子会社化する春秋航空日本など日航系のLCC3社を就航地などですみ分けして収益拡大を図る。
さらに、マイル会員の基盤を活用した事業も強化。キャッシュレス決済など金融関連の新規事業も展開する考えだ。一方で二酸化炭素(CO2)の削減に向けた取り組みも並行して進める。出資した米国の会社からSAF(持続可能な航空燃料)の供給を受けることで、従来燃料からのコストの増加を抑えた上で、8年3月期に約50万トン規模のCO2削減を目指す。
これらの計画を進めた結果、JALブランドの航空事業の収益全体に占める割合は、2年3月期の約7割から8年3月期には約6割に減るが、LCC事業やマイル事業、貨物事業などで減収分を補うことができるとした。
ただ、航空事業が収益の柱となる構造は変わっておらず、計画の成否はワクチンの普及で旅客需要がいつ戻ってくるかにかかっている。赤坂氏は「英米の状況をみると、ある程度、ワクチンの接種が進めばたまった需要がドカッと戻る傾向が見える」と語ったが、会見で4年3月期の業績見通しを示せなかったように、コロナからの需要回復時期は誰にも見通せないのが現状だ。(大坪玲央)