人間と、人間に食材を提供してくれる地球(大地)との最適マッチングを図り、「人間が地球を豊かにして、地球は人間を健康にする」社会を実現したい。そのためにテクノロジーや想像力を駆使する。(Wow-Food社長・辻慶穂)
Wow-Foodのジュース「Wow-COLD PRESS」の開発は、英国が真ん中の世界地図を開き、世界を俯瞰(ふかん)することから始まった。世界中の主要シトラス(かんきつ類)農場をイメージしながら見る。米国は土地が傷んで根腐れが起き、作物の産出量が減ってきている。欧州は米国と同じように土地が傷み、収穫の循環が良くない。イスラエルあたりは良い農地だが、中東の政治情勢は不安定で、日本から出張しにくい。北半球の人口は多く、大気汚染の影響を受けている上、作物を長年とり続けてきた歴史がある。
南半球に目を転じると、南アフリカは黒人の反乱によって品質管理、工場マネジメントに不安がある。南米は総じて治安が悪い。また、ブラジルのシトラスは酸味が強く、水っぽく感じる。結果的に、自然環境が良い南半球の中から豪州を選び、場所を見定めて世界最適を図った。
筆者は世界60数カ国を回り、生産者や工場、流通にかかわる人たちと一緒にセスナ機に乗って農場を見たり、収穫したり、採取した土の微生物を顕微鏡で観察したりしてきた。これらの経験からつくづく思うのは、地球上で解明されていないことが多いということだ。
例えば消費者は、自分の体の状況が分からず、体に合う食品も分からない。だから大量生産、大量消費が成り立つ。その陰で体調が悪くなったり、心が病んだりする人もいるだろう。個々の人間の体を理解し、データで解明し、それに合った食を提供することで、体と心の調子が良くなり、健康な毎日を送れるようにしたい。
Wow-Foodの商品設計の軸は「素材を大切に」だ。土地、オレンジの木、収穫する人、製造工程、輸送プロセスを経て消費者のもとに届く。とれた状態に近い味、香り、栄養など素材の良さをどう再現し、届けるかを追求し、もぎたて低温搾汁で添加物を加えず、チルド輸送としている。それは人間と地球の最適マッチングの取り組みでもある。
その取り組みは緒に就いたばかりだ。さまざまな知見をデータ化し、志を同じくする世界中の仲間たちとタイアップしながらパズルを組み合わせ、大きな地図を完成させていきたい。消費者の協力を得ながら一緒に、人と地球を最適な状態に戻したい。(この項おわり。次回からプレゼンスの田路和也代表取締役社長が「営業部門の時間生産性向上」について解説します)
【プロフィル】辻慶穂 つじ・よしのり 法大経卒。ユアサ商事、西本貿易(現西本Wismettacホールディングス)を経て、2015年Wow-Foodを設立。素材本来の力を生かしたもぎたて低温搾汁のジュース「Wow-COLD PRESS」や、植物性発酵飲料「Wow-Kombucha」などを開発・販売。46歳。石川県出身。