スーパーなどの消費の現場で価格引き下げの動きが本格化している。新型コロナウイルスの感染拡大による企業業績や雇用情勢の悪化で会社員らの所得が低下。消費者の節約志向が高まっているためだ。イエナカ需要で好調なスーパーも危機感を募らせており、各社は顧客引き止めに躍起だ。しかし値下げ競争が過熱すれば景気回復の指標とされる物価上昇を抑制し、デフレ懸念が強まる可能性も指摘される。
来店客に値下げ商品であることを知らせる赤い値札が、商品棚のあちこちに取りつけられている西友赤羽店(東京都北区)の食品・日用品売り場。買い物かごを下げた来店客が値札の前で思わず足を止める。
西友は9月4日から調味料や衣料用洗剤など765品目を最大約18%値下げした。セールではなく継続的な値下げだ。担当者は「カレールーや乳製品、チョコレートなどは売り上げが2~3割アップした。西友に来ればお買い得品があるというイメージが定着してくれればいい」と話す。
値下げに踏み切った背景には、消費者の節約志向の高まりがある。新型コロナの感染拡大に伴い企業業績が悪化。その結果、雇用や家計に対する不安が広がっており、消費者の財布のひもを固くさせている。
厚生労働省が発表した8月の毎月勤労統計調査(従業員5人以上)によると、1人当たりの現金給与総額は1・3%減の27万3243円だった。緊急事態宣言が出た4月から5カ月連続のマイナスで、今後も企業のボーナス見送りや減額の動きが見込まれる。
小売りの現場では夏ごろから「来店頻度が増えないのに客単価が減った」「特売チラシへの反応が敏感になってきた」といった声がささやかれ始めた。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「来店客の消費行動の傾向が変わり、しばらくは尾を引きそうな情勢になっている」と分析する。