がんの手術でリンパ節を取り除いた後などに発症する「リンパ浮腫」の専用ケアシートの開発を前橋市の山田俊介さん(47)が進めている。昨年卵巣がんで亡くなった妻が生前、生理用ナプキンなどで代用していたことに悩んでいたのがきっかけで「同じ症状で苦しむ人の助けになりたい」と話している。
リンパ浮腫は、がんの治療部位に近い腕や脚などの皮膚の下にリンパ液がたまってむくむ状態で、患部からリンパ液がにじみ出る症状に苦しむ患者は少なくない。
山田さんの妻紋子さんは2015年にがんが見つかった。手術後、リンパ浮腫を発症し、医師に勧められた生理用ナプキンやペット用のトイレシートを常に手脚に巻いていた。「これじゃ恥ずかしい」と体調が良いときでも外出したがらない妻を見て「人間の尊厳とは何なのか」と疑問に思った。
19年5月に46歳で紋子さんが亡くなった後、専用シート「とりこっとん」の開発に向け、任意団体「nunology(ヌノロジー)」を立ち上げた。現在は群馬県繊維工業試験場の協力を得て、吸水性が高く、菌が繁殖しにくい素材の開発を行っている。
試作品は手触りも良く、カラフルな花柄や水玉模様を施した。患部に合わせた手縫いのセミオーダーで、年内の商品化を目指す。山田さんは「リンパ浮腫の国内患者は15万人とも言われている。今までになかったものを作りたい」と意欲を語る。