遊技産業の視点 Weekly View

ファン取り込み、プロ野球を参考に

 パチンコは、わざわざパチンコホールという専門店にまで出向かなければ体験できない娯楽である。そのため、「生活行動の大半をスマホで済ますことのできる現代社会において置き去りになりつつある」などといわれたりもする。しかしながら、プロ野球の観客動員数が近年、増加を続けているというデータに接したとき、“わざわざ出向く”という面倒さだけが参加率推移の差を生んでいるわけではないことに気づかされた。(ホールマーケティングコンサルタント、LOGOSプロジェクト上級研究員・岸本正一)

 出向かなければ経験できないという点では、プロ野球の方がパチンコよりも圧倒的に不利だ。一般的には公共交通機関で球場最寄り駅まで向かい、さらにそこから徒歩で球場まで向かう必要がある。また、野球観戦はカップルやグループで楽しむのがむしろ自然であり、よほどのプロ野球マニアでない限りは誰かと誘い合って観戦に出向く。このような背景から、近年では球場の座席に企画シートが増加するなど、観戦のスタイルも広がりを見せつつある。

 パチンコやパチスロ遊技は基本的に“お一人様消費”のスタイルだが、業界を挙げて“連れパチ”を推奨している現在、このプロ野球の取り組みは参考にできるのではなかろうか。ともあれ、全体を通じて感じるのは、パチンコと比較してプロ野球観戦には“多様性”があるということだ。ビギナーからマニアまで幅広く受け入れる土壌が整っており、さらにさまざまなスタイルで野球観戦を楽しむことができるようになっている。「四角四面の枠の中、くるくる回る風車に乗せて」という昭和のパチンコホールの懐かしいマイク放送があったが、業界が“四角四面の枠の中”に閉じ籠もっているわけにはいかない時代。いたずらに異業種の事例を参考にすることは控えたいが、同じ“出向かなければ楽しめない娯楽”であるプロ野球観戦は十分に参考の対象となる。業界も柔軟な発想で、多様性のあるパチンコ・パチスロの将来を考えたいところだ。

 いろんなスポーツが登場し、それぞれにファンを獲得する背景で、昭和のスポーツの王様である野球がファン数を増やしている。昭和の娯楽の王様といわれたパチンコ・パチスロも、そうできないはずはない。

【プロフィル】岸本正一

 きしもと・しょういち 1963年生まれ。元SEの経験を生かし、遊技場の集客メカニズムを論理的に整理・研究する傍ら、全国のパチンコホールを対象にコンサルティングを行う。雑誌への連載やテキストの出版、セミナーでの講演なども手掛ける。オベーション代表。

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