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新幹線長崎ルート整備行き詰まり フル規格化に佐賀県猛反発

 福岡と長崎を結ぶ九州新幹線長崎ルートの整備計画が暗礁に乗り上げている。政府、与党は未着工の新鳥栖-武雄温泉をフル規格で建設したい考えだが、巨額の負担を求められる地元佐賀県が猛反発しているためだ。打開策が見つからず、目標とする2023年度末ごろの着工は見通せていない。

 「佐賀県は新幹線整備をこれまでも、今も求めていない」。山口祥義知事は4月下旬の与党検討委員会で反対姿勢を鮮明にした。委員らの予想を超える強硬な態度で、長崎県の中村法道知事も「真意を測りかねる」と戸惑いを隠せなかった。

 博多(福岡県)で接続する山陽新幹線と同じフル規格の場合、同区間の建設費は約6200億円。与党はJR九州が国側に支払う線路使用料(貸付料)を最大限活用することで佐賀県の負担を約660億円に抑えられると試算し、理解を求めていたが、山口知事は「条件闘争はしていない」と突き放した。

 当初、長崎ルートには新幹線と在来線を走行できるフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)を導入し、新鳥栖-武雄温泉は在来線の線路を使う計画だった。建設費は1000億円前後とフル規格より大幅に安く、佐賀県は「渋々と」(幹部)同意した経緯がある。だがFGTの開発が頓挫し、同意も崩れたというのが県の立場だ。

 博多-佐賀は特急で最短約35分で結ばれており、負担に見合うメリットがないと考えていることも反対の理由だ。新幹線ができれば在来線の運行本数が減り、県内移動が不便になる懸念もある。

 既にフル規格で建設中の武雄温泉-長崎は22年度に開業予定。武雄温泉駅で特急と新幹線の乗り換えが必要になるため、JR九州も全線フル規格での整備を訴える。

 与党内では、佐賀県の同意を得るため、JRへの貸付料増額や長崎県による一部肩代わりで負担を減らす案が取り沙汰されている。佐賀県は新幹線開業後に並行在来線がJR九州から経営分離されるのを警戒しており、同社が運行継続を判断するかも焦点となる。

 与党は夏に控える政府予算の概算要求までにフル規格化の方向性を固め、来年度に環境影響評価(アセスメント)を始める青写真を描くが「県の態度は固く、膠着(こうちゃく)状態が続くだろう」との見方が広がっている。

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