自動車各社が上海国際モーターショーで電気自動車(EV)や、EVとして走行し、電池が切れればエンジンで走るプラグインハイブリッド車(PHV)などの電動車を矢継ぎ早に発表するのは、世界最大市場を抱える中国の環境規制に対応するためだ。ただ、各社の生産計画の積み上げが、電動車の供給過多につながる懸念も強まっている。需給バランスが大きく崩れれば、中国市場が電動車の普及を牽(けん)引(いん)するというシナリオに基づく各社の戦略も修正を迫られかねない。
トヨタ自動車が公開したのは、スポーツ用多目的車(SUV)「C-HR」と「IZOA」のEV。吉田守孝副社長はEVについて、「2020年代前半までに世界で10車種以上に拡大する」と強調した。同社は先月、現地で「カローラ」と「レビン」のPHVを発売した。
日産自動車は、主力セダン「シルフィ」の新型車を初公開。EVでは今年、北米国際自動車ショーで公開した試作車「IMs」を中国で初めて披露した。ホンダも、中国専用EVと位置づけるSUVの試作車「X-NVコンセプト」を初公開しており、来年にはPHVも投入する方針だ。
中国政府は今年、自動車会社に対して現地生産の一定比率をEVやPHVなどの「新エネルギー車(NEV)」にすることを義務づける規制を導入。日本勢が得意とするハイブリッド車(HV)はNEVには含まれず、対応を迫られていた。背景には、自国市場の競争のルールを変えて電池などEV関連産業の振興につなげようとする中国の思惑がある。多くの日本メーカーにとって、中国は米国と並ぶ2大市場。しかも、トランプ政権の保護主義的な政策による通商リスクが大きく、中国市場の相対的な重要性は高まっている。