日米間の新たな貿易交渉で争点となる自動車分野をめぐり、トランプ米大統領は完成車や部品への追加関税をちらつかせるなどして揺さぶりをかけてきた。トランプ政権誕生後の日本車の輸出に大きな変化はみられないが、実際に強硬策がとられた場合のショックへの懸念は大きい。
日本にとって米国は自動車の最大輸出相手国であるのに対し、日本での米国車の存在感は薄い。トランプ氏は「(日本は)何百万台もの車を(米国に)送り込んでくるのに、米国の車は買わない」などと不満をあらわにしてきた。
ただし財務省によると、平成30年の対米輸出は4兆5243億円で、前年比1%減とほぼ横ばい。自動車の対米輸出は20年のリーマン・ショック後に落ち込んだが、近年は4兆円台で推移し、トランプ政権になってからも安定している。
対米貿易全体でみると30年の黒字額は6兆4548億円で、前年の7兆232億円から8.1%減少しているが、「原油価格の高騰などで輸入総額が増えた影響が大きい」(大和総研の小林俊介エコノミスト)。自動車の輸出が微減にとどまったのに加え、電気機器や一般機械の輸出額はむしろ増えている。
ただ、鉄鋼に関しては対米輸出量が前年比で2割減少。トランプ政権が昨年3月、鉄鋼に25%の追加関税を課した影響が出た可能性がある。トランプ政権が今後、自動車への追加関税や、輸入数量規制に突き進めば、影響が甚大になる可能性もある。(蕎麦谷里志)