アンコウ鍋発祥の地といわれる茨城県北茨城市。温泉宿が並ぶ町の一角に「あんこうの宿 まるみつ旅館」はある。
玄関をくぐると、旅館を経営する武士能久(たけし・よしひさ)社長(43)が出迎える。着用したエプロンには、アンコウのイラストとともに「あんこう研究所」の文字。研究所は旅館の向かいにある。町の資源であるアンコウの可能性を探究するため設置した。
伝統的な調理にとどまらず、ラーメンやメンチカツバーガーといった新たなグルメに加え、アンコウに含まれるコラーゲン入りの入浴剤など食品以外の活用法を生み出している。初めての宿泊客は「宿なのに研究所があるの?」と驚くという。
「あん肝同盟」発足
旅館内にも、さまざまなアイデアを盛り込んでいる。例えば自動販売機。アルコールやジュースなどの見本のラベルは色鉛筆で手描きしている。それを見た宿泊客がSNS(会員制交流サイト)で発信し、話題を呼んだ。
「他と比較されない宿づくりを心掛けていて、その中でワクワク、ドキドキをちりばめる。自分もワクワクしたいんです」
旅館はおよそ半世紀の歴史を持つ。魚の仲買人をしていた武士社長の祖父、光男さんが開いた民宿が始まりだ。光男さんはアンコウを使った郷土料理「どぶ汁」を鍋にして提供し、観光客に広めた。