田辺三菱製薬は11日、戦前からの主力工場だった大阪市淀川区の加島事業所を2021年12月末に閉鎖すると発表した。薬価引き下げなどで事業環境が厳しさを増す中、経営の効率化を図る狙い。同社は“薬の町”の同市中央区道修町(どしょうまち)に本社を置くが、経営企画など中枢機能は数年内に東京本社(東京都中央区)へ移転する方針を示している。生産、技術拠点も大阪から姿を消すことになる。
加島事業所は、前身の田辺製薬の工場として昭和14年操業。戦後猛威をふるった結核の画期的な治療薬として大ヒットした新抗結核薬「ニッパス」のほか、止血剤「アドナ」などを製造し、経営を支えてきた。
しかし近年は、薬価引き下げやジェネリック医薬品(後発薬)の台頭などで国内市場の縮小傾向が続き稼働率は低下。昨年3月に工場機能を停止した。従業員約600人で生産技術の研究拠点に衣替えしたが、さらなる合理化が必要と判断した。人員と研究機能は山口県と福岡県に移し、敷地は売却する。
また、創薬研究の拠点の一つである埼玉県の戸田事業所を2020年3月末に閉鎖し、神奈川県に集約することも発表した。
同社は経営計画で米国での事業拡大を成長戦略に位置付けており、本社や生産機能の最適化を進めている。