拡大路線をひた走ってきたコンビニエンスストア業界が曲がり角に立たされている。人手不足と人件費上昇を背景に、大原則として掲げてきた「24時間営業」が見直しを迫られているためだ。人口減少時代に即したビジネスモデルの再構築が、今後の経営課題として浮上している。
最大手セブン-イレブン・ジャパンでは、大阪府の加盟店オーナーが人手不足を理由に自主的に時短営業に踏み切ったことで24時間営業の是非が問題化。セブンはこれを機に、見直しを視野に入れた時短営業の実証実験に乗り出した。
これに追随する形でファミリーマートも約270店舗を対象に時短営業の実験を6月から始める。両社とも、時短に伴って生じる売上高や収益への影響などの検証を急ぐ構えだ。
ローソンはすでに時短営業店が41店に上ることから時短実験は行わない。ただ、デジタル技術を活用して深夜帯に無人で営業する実験を7月から始めると明らかにしている。
各社が矢継ぎ早に対応策を打ち出すのは人手不足を理由に24時間営業の見直しを訴える、加盟店オーナーなどからの声の高まりを無視できなくなってきたためだ。スーパーも事情は同様で、イオン傘下のマックスバリュ西日本も3月から食品スーパーの一部で実施していた24時間営業を取りやめている。
世耕弘成経済産業相が、人手不足への対応策を盛り込んだ行動計画の策定を各社トップに要請したことも、こうした判断を後押ししたようだ。
ただ、取引先工場では24時間営業を前提に弁当などの商品を製造、供給している。全国に張りめぐらせた物流網を使って配送しており、従業員の雇用も含めインフラを拙速に変えるのは困難を伴う。また24時間営業ならではの利便性を失えば消費者の離反を招きかねず、各社は24時間を見直す場合でもこうしたリスクと向き合う必要がある。
人口減少時代に持続可能な新たなビジネスモデルをどう作るか。各社の試行錯誤はまだ緒に付いたばかりだ。(柳原一哉)