朝晩の搾乳や牛の健康管理で労働時間が長くなりがちな酪農業で、人工知能(AI)やドローンを活用した働き方改革が進んでいる。農林水産省は「家族労働が中心で、負担が大きい」として省力化機械の導入を支援。国内生乳生産量の約半分を占める北海道では、酪農家が子育てなどの時間を確保しようと作業のやり方を見直している。
北海道別海町の卯野佳子さん(34)は、牛約150頭の体調管理にスマートフォンやタブレットのアプリを使っている。牛の首に着けたセンサーが反芻(はんすう)回数や歩数を読み取り、情報を基にAIが病気や発情の可能性を分析する。
牛の乳房炎やひづめのけがなどが進行すると夜通しの作業が続くこともある。夫婦で牧場を経営しながら2人の子供を育てており、AIの活用で時間に余裕が生まれた。「以前は体力の限界を感じたこともあった。今は頻繁に牛舎を見回る必要がなく、家族の時間が増えた」と喜ぶ。
帯広市の加藤賢一さん(67)は、搾乳ロボットを導入した。乳頭の位置をセンサーで検知し、自動で洗浄、搾乳する。ロボットが個体ごとに乳量などのデータを記録しており、必要以上に搾ることもない。
牛舎内に散らばった餌を牛の近くに寄せるロボットも使っており、作業を効率化して牛を約100頭増やすことができた。「人材を常時確保することは難しい。機械なら安定的な労働力を得られる」と語った。