【ソウル=桜井紀雄】韓国の航空大手、大韓航空は27日に株主総会を開き、同社を中核とする財閥「韓進(ハンジン)グループ」会長で大韓航空の代表取締役会長も務める趙亮鎬(チョ・ヤンホ)氏の取締役再任案を否決した。自身を含む一家の不祥事続出に株主から「ノー」を突きつけられた格好だ。創業家出身の財閥トップが株主権行使で取締役から退くのは極めて異例で、韓国メディアは「歴史的事件だ」と伝えている。
亮鎬氏の長女は、2014年に客室乗務員のナッツの出し方に激怒して搭乗機を引き返させ、「ナッツ姫」と呼ばれた顕娥(ヒョナ)氏。昨年には、次女や妻のパワハラ事件も相次ぎ発覚し、顕娥氏や妻は自社機を使った高級ブランド品の密輸事件で在宅起訴された。亮鎬氏自身も背任や横領などの罪で公判中だ。
取締役再任には株主の3分の2以上の賛成が必要だが、35・9%が反対に回った。大韓航空の約11%の株を持ち、韓国の国民年金を運用する「国民年金公団」が前日に「企業価値を毀損(きそん)した」などとして亮鎬氏の再任反対を決定したほか、海外の機関投資家なども反対を表明していた。
朴槿恵(パク・クネ)前政権と財閥の癒着を糾弾してきた文在寅(ムン・ジェイン)大統領は1月、大企業トップ一家の重大な脱法・違法行為に対し、国民年金公団が株主権を「積極的に行使する」と表明。政権の意向も反映されたとみられる。
ただ、亮鎬氏は依然、大韓航空の最大株主であり、今後も経営に一定の影響力を維持する可能性がある。