【遊技産業の視点 Weekly View】外出しない若者とパチンコ


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 □ホールマーケティングコンサルタントLOGOSプロジェクト上級研究員・岸本正一

 若年層の遊技参加率が低い現状から、パチンコのライバルとしてソーシャルゲームの存在を指摘する声は多い。遊技機の一部にはソーシャルゲームの雰囲気を醸し出しているものも登場するなど、パチンコ業界がソーシャルゲームの存在を少なくとも意識しているのは間違いない。しかしながら、問題はソーシャルゲームをどのようにライバルと位置付けるかという点にある。私はこの問題の根幹を「ソーシャルゲームを含むインターネットサービスの存在そのもの」にあると考えている。

 現在、若年層の遊技参加率が低い理由の背景には、“そもそも彼らは休日であってもあまり外出しない”という実情がある。国土交通省の調査によれば、現在の20代は70代よりも外出率が低い。

 彼らはスマホをツールとして、「遊び」「買い物」「交友」などの行為をインターネット経由で行うことにより、必然的に外出する必要がなくなっている。わざわざホールに出向かなければならないパチンコは、彼らの現在の生活様式になじんでいない。

 仮に、遊技機とプレーヤーのスマホが通信で結ばれて、遊技中にキャラクターからスマホにメッセージが届くとか、演出画面の拡張部分をスマホの画面で確認できるなどということが現実になったとしても、それはソーシャルゲーム的面白さに一歩近づくというだけで、彼らの生活様式にフィットするものではない。これを解決するには、オンラインパチンコが登場する以外に方法はないのだ。

 だが、私はオンラインパチンコなるものが実際に登場するとは現在のところ、まったく予想していないし、法的背景を含めてそのような動きが具体化しつつあるという信頼性の高い情報にも接していない。ゆえに、パチンコという遊びは現在のまま、しばらくはアナログな遊びとしての道を歩んでいくものだと考えている。ならば、静かなブームとなりつつあるボードゲームのように、パチンコも思い切ってアナログの面白さに特化しそこに活路を見いだすことも、“深化”という一つの進化といえるのかもしれない。

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【プロフィル】岸本正一

 きしもと・しょういち 1963年生まれ。元SEの経験を生かし、遊技場の集客メカニズムを論理的に整理・研究する傍ら、全国のパチンコホールを対象にコンサルティングを行う。雑誌への連載やテキストの出版、セミナーでの講演なども手掛ける。オベーション代表。