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花粉対策新商品、林業きっかけ エステーの商品開発、森林保全・地元雇用にも貢献

 エステー(東京都新宿区)は12日、マスクに薬剤をひと塗りするだけで香りが周囲に浮遊する花粉のアレルギー性を下げる新製品「花粉バリアスティック」を全国のドラックストアなどで発売する。北海道で生育するトドマツの間伐後の残材から抽出した精油を活用した。同社が11年前、森の空気を生活に活用しようと始めた研究が原点だ。

 新製品は、無色のスティックタイプで持ち運びしやすく、1日4回使用の場合、約45日間使用できる。点鼻薬やゴーグル、空気清浄機などの従来の花粉対策と異なり、マスクに塗るだけというのが特長だ。

 トドマツの精油活用

 マスクに塗る方法を採用したのは、市場調査で花粉対策としてマスクをつける人の割合が約8割を占めるものの、「顔とマスクの間に隙間ができてしまい、花粉の全てを防ぎきれない」「マスクをしてもくしゃみ、鼻水が出る」などの不満の声に着目したからだ。

 製品の原料は、トドマツの葉から抽出した精油。この精油には、大気中の二酸化窒素を無害化するほか、老化や動脈硬化を引き起こす過酸化脂質の生成の抑制作用、消臭効果が期待されている。エステーが2007年から、森林研究・整備機構(茨城県つくば市)と共同研究を行い、発見した。11年からは、「クリアフォレスト事業」として製品化に取り組んできた。

 ビジネス開発事業部の奥平壮臨・クリアフォレスト担当部長は「林業をやっている人に花粉症が少ない、と感じたのがきっかけ。森の空気に花粉を無害化する秘密があるのでは、と考えた」と語る。

 トドマツの精油の抽出方法も独自の手法を編み出した。

 一般的な水蒸気による精油の抽出方法では、少量で時間がかかることと、精油の安定供給が課題だった。エステーは、電子レンジなどで知られるマイクロ波を使用した新しい蒸留装置を開発。短時間で高品質な精油を安定して抽出でき、しかも植物そのものの水分しか使用しないため廃液もない環境に優しい製法だった。供給面でも、地元企業と提携して北海道釧路市内にプラントを新設し、残材の集荷から粉砕、抽出までのシステムを構築した。

 森林保全と地元雇用

 ところで、このビジネスモデルは、森林の保全と都市の空気浄化、地元の雇用が同時に達成できる画期的なものだ。

 精油を抽出するためのトドマツの葉は、北海道のトドマツ林の間伐後の残材。間伐材は、割りばし、紙コップ、コピー用紙、木質バイオマス燃料などに利用されているが、残材は放置されたままだった。エステーはこの残材を有効活用することに成功した。

 クリアフォレスト事業では、自社製品のみにとどまらず、オープンイノベーションによる他社との共同事業も目指す。10月には、日本カルミック(東京都千代田区)と協業した業務用ディフューザー「エアーフレッシュナー」が発売された。同月からダイアン・サービス(同品川区)との協業で、エアコン用空気浄化フィルターの予約販売が始まっている。エステーは、花粉バリアスティックを第1弾としたヘルスケア製品ブランド「MoriLabo(モリラボ)」を立ち上げ、注力していく考えだ。

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