川崎北部市場水産仲卸協同組合(川崎市宮前区)は、新技術を用いて熟成させた鮮魚を独自ブランド化して出荷する。鮮度を保ちながら熟成させたことで、芳醇(ほうじゅん)な味と香りが特徴の高付加価値商品として水産物ニーズを開拓する。今後、研究開発を続けて魚種を増やすとともに増産にも取り組むことで、海外にも展開していく。
新ブランドは「発酵熟成熟鮮魚」。同組合と明治大学発ベンチャーのミートエポック(川崎市多摩区)が共同開発した。
ミートエポックが製造販売する「エイジングシート」という、人体に無害な菌を純粋培養し胞子を付着させた布で魚全体を包み、冷蔵庫で保存する。20日ほど寝かせると、新鮮さが保たれたまま、臭みがなく熟成香といわれるミルクやナッツに似た芳醇な香りに熟成される。
肉質が軟化するのでかみ切りやすくなり、不飽和脂肪酸の増加によって口溶けが良くなる。
川崎市中央卸売市場北部市場内で卸売りするほか、飲食店の経営・企画開発のにっぱん(東京都千代田区)が運営する「寿司魚がし日本一」川崎店などで、握りずし、刺し身、焼き魚として提供するほか、通販サイトでも販売する。
全国的な魚離れが進行するとともに、同市場の水産物取扱高は1990年の約800億円から、2017年には244億円と約3割に落ち込んだ。
特に水産物市場は近隣に豊洲、大田、横浜があり、川崎北部市場は大きく後れを取っていた。このままでは取り残されるという危機感から、高付加価値商品開発によるブランド化に乗り出した。
これまでにマグロ、カジキ、銀ダラを商品化しているが、研究開発を続けて魚種を増やすとともに増産にも取り組む。今後、生産能力を高めて販売ルートを開拓し、全国に出荷するほか、日本食ブームが続く海外市場への輸出に取り組むことも計画している。
同組合の種村誠二理事長は「個人的には広く製造技術を伝えて、国内の水産業関係者が潤えるようにしたい」と話している。