【遊技産業の視点 Weekly View】9月、韓国で「賭博中毒追放の日」


【拡大】

 □シークエンス取締役 LOGOSインテリジェンスフェロー・木村和史

 日本では毎年5月14日からの1週間をギャンブル等依存症問題啓発週間とすることが定められたが、韓国では国内の射倖産業を統合的、包括的に監督する政府機関である射倖産業統合監督委員会(NGCC)が設立された日にちなみ、毎年9月17日を「賭博中毒追放の日」と定め、2009年から賭博中毒の弊害と副作用を多くの国民に認識してもらうための記念式典などの催しが行われている。この日を含む週を「賭博問題認識週間」に指定し、NGCCの管轄下で実務などを主管する韓国賭博問題管理センターや、その傘下にある地域センターなどが中心となって、多様なキャンペーンやフォーラムが開催されている。今年は、ソウル特別市鐘路区光化門の世宗文化会館で開催され、賭博中毒追放のスローガンを掲げた除幕式とともに、俳優のシン・ファンジョン氏を広報大使に任命した。

 NGCCが対象としているのは、競輪、競馬、競艇、カジノ業、体育振興投票券(スポーツくじ)、宝くじ(ロト)など一般的に韓国国民が日常で体験できる賭博で、これらに対し、射倖産業総量制の導入、健全な評価、電子カード制での運営、賭博中毒予防治癒の負担金の新設および管理センターの設立などを通じて、射倖産業の健全化と賭博中毒の予防・治癒における制度的な基盤作りに邁進(まいしん)してきた。

 しかし現在、賭博中毒で問題となっているのは、これら公営ギャンブルよりも、インターネットを介在した違法賭博や闇カジノといった不法射倖産業による中毒が深刻となっている。管理センターへ寄せられる相談件数のうち、不法射倖産業関連の相談が約60%を占めており、とりわけインターネット不法賭博関連への相談が若年層を中心に増加しているようだ。つまり語弊はあるが、江原ランドや他の公営ギャンブルは、まだ賭博の実態が把握できるレベルにあり、一方で不法射倖産業は捉えどころがないということになる。

 日本でも、カジノや既存ギャンブルなどへの依存対策がさまざまに打ち出されているが、韓国でみられるこれらジレンマを参考に、違法賭博への依存を含めた包括的解決を目指してもらいたい。

                   ◇

【プロフィル】木村和史

 きむら・かずし 1970年生まれ。同志社大学経済学部卒。大手シンクタンク勤務時代に遊技業界の調査やコンサルティング、書籍編集に携わる。現在は独立し、雑誌「シークエンス」の取締役を務める傍ら、アジア情勢のリポート執筆など手掛ける。