新潟県の乳酸菌メーカーが、独自の技術で付加価値を付けたコメ商品を開発し、フィリピン市場に次々と投入している。腎疾患のある患者向けの「低たんぱく米」や、封を切ってすぐに食べられる災害時用を売り出した。フィリピン国民の大半がコメを主食とすることなどに商機を見いだし、社長が自ら現地に移住し、東南アジアでの販路拡大を目指している。
植物性乳酸菌を活用した発酵技術を強みとするバイオテックジャパン(新潟県阿賀野市)は2016年11月、郷里にちなんで「ECHIGO(エチゴ)」と名付けた低たんぱく米の販売をフィリピンで始めた。
経済成長が続くフィリピンでは、食生活の向上に伴い腎臓病患者が急増した。国立腎臓移植研究所によると、00年以降の患者数の増加率は毎年約10~15%だ。この状況に着目し、タンパク質の摂取が制限されている患者の食事に利用できるようにと考えたのが開発のきっかけだった。
「乳酸菌の働きでタンパク質を分解し、一般的な包装米飯に比べてタンパク質を1割に抑えた」と江川清貞社長。マニラ近郊にある子会社「バイオテックJP」の社長も兼ねており、フィリピン事業に本腰を入れるため15年に現地に移住した。1パック200グラムで55ペソ(約115円)。1日に約3000食を生産しており、年内には5000食まで増産する方針だ。
市場参入に踏み切ったのは、腎臓病患者からのニーズやコメ好きというフィリピン人の嗜好(しこう)のほか、包装米飯になじみが薄い現状もあった。2月からは糖尿病予備軍向けに、低カロリーで食物繊維が豊富な包装米飯(1パック45ペソ)も販売。フィリピンは災害が多く、非常食として調理をせず封を切るだけで食べられるコメも近く商品化する。
20年にはマニラ北方のタルラック州で新工場が稼働し、増産が本格化する見通しだ。フィリピンで地盤を固めつつ、東南アジア各国への輸出も目指す。江川社長は「多機能なだけでなく、東南アジアの人々の口に合うようにコメの粘り気の改良も重ねた。需要を見極めながら、技術を食生活の向上につなげたい」と意気込んでいる。(マニラ 共同)