リニューアルしたJR肥前浜駅舎のオープニングセレモニー。ミス日本酒の2人も着物姿で花を添えた=3月24日、佐賀県鹿島市【拡大】
□平出淑恵(酒サムライコーディネーター)
このコラムでも毎回紹介している佐賀県鹿島市の「鹿島酒蔵ツーリズム」が、今年も来訪者の記録を更新した。3月24、25日の2日間で8万8000人の人出でにぎわったという。
市内にある6つの蔵元の蔵開きを中心に、街を回遊しながら楽しむツーリズム。2011年に富久千代酒造の「鍋島 大吟醸」が、世界最大規模のワイン審査会、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)SAKE部門で、世界一のチャンピオン・サケに輝き、世界に発信されたのがきっかけだ。
受賞を機にその翌年、市内の蔵元や市民、観光協会、行政が協力して、蔵開きのお祭りを市内回遊の酒蔵ツーリズムというイベントに仕立てて大成功させた。その後、観光庁に発足した酒蔵ツーリズム推進協議会でも成功例として広く全国に紹介され、政府や自治体からの視察が毎月のようにあるという。
4年前からは隣接する嬉野市とも連携して成果を上げてきた。さらに今年は初日の開会式に、88年ぶりにリニューアルされたJR肥前浜駅庁舎のオープンセレモニーも重なった。リニューアルを全面的に支援してきた佐賀県の山口祥義知事がにこやかに挨拶に立ち、ミス日本酒の2人も花を添えた。
このツーリズムを支えている鹿島酒蔵ツーリズム推進協議会は、11年の発足当初から毎月会議を重ね、イベントの成功という実績を挙げてきた。市内の蔵元が同協議会会長に就任しており、現在は光武酒造場の光武博之社長が4代目を務める。
協議会発足時に就任2年目で、ツーリズムとともに歩んできた樋口久俊鹿島市長は、「祈りの酒、喜びの酒、忘れたい酒など人生の節目に登場する酒だが、日本酒はそのどれにもふさわしい役割を担ってくれる」と語り、「鹿島の人々は、悩み、苦しみ、格闘しながら、今のような“酒の場”を作ってきた。鹿島の酒に乾杯!」と市民にエールを送った。
鹿島は、酒蔵ツーリズムの先駆けとして今後も、発展していくだろう。
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【プロフィル】平出淑恵
ひらいで・としえ 1962年東京生まれ。83年、日本航空入社、国際線担当客室乗務員を経て、2011年、コーポ・サチを設立、社長に就任。世界最大規模のワイン審査会、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)のアンバサダー。日本ソムリエ協会理事、日本酒蔵ツーリズム推進協議会運営委員、昇龍道大使(中部9県のインバウンド大使)などを務める。