神戸製鋼所「複合経営」が裏目に 取引中止が拡大なら解体も現実味 (1/2ページ)

記者会見する神戸製鋼所の川崎博也会長兼社長=26日、東京都千代田区
記者会見する神戸製鋼所の川崎博也会長兼社長=26日、東京都千代田区【拡大】

 子会社で日本工業規格(JIS)の認証を取り消された神戸製鋼所は、鉄鋼以外にも建設機械や電力などを多角展開する「複合経営」が裏目に出た。高コスト体質に加え企業統治の不全を誘発。取引中止が広がれば、解体論が現実味を帯びる。

 「自主点検で見つけ出した。うみは出せている」。2年連続となった製品の数値改竄(かいざん)によるJIS認証取り消しに対し、川崎博也会長兼社長は26日の記者会見で自浄作用は働いていると弁明した。体調をくずして入院していたという川崎氏は、調子を問われると「何とか眠れている」と疲弊した表情で答えた。

 データの不正はアルミニウムや銅といった素材にとどまらず、最終製品を扱う機械部門にまで波及したことが新たに判明した。JIS認証の取り消しはさらに広がる恐れがある。

 認証がなくとも取引先が受け入れれば販売は可能だが、一連の不正で神戸製鋼に対する信頼は風前のともしびだ。既に一部から製品の交換や費用請求の動きが出ているという。「どれぐらい広がるか全く見通せない」(銀行筋)状況で、ボディーブローのように経営への打撃となりそうだ。

 高炉を有する国内鉄鋼メーカーは今世紀初めに6社あった。現在は新日鉄住金、JFEホールディングス、神戸製鋼の3グループに集約。きっかけをつくったのが日産自動車社長に当時就任したカルロス・ゴーン氏だ。調達費を下げるため大幅な値下げを要求したことで、鉄鋼価格が急落した。各社は過剰競争を避け、経営統合して値下げ圧力に対抗しようとした。

神鋼だけが再編の波に乗らず、単独路線を貫いた背景