実験作業ロボット「まほろ」。AIと組み合わせ、細胞の自動培養を目指す=9月29日、東京都江東区の産業技術総合研究所臨海副都心センター【拡大】
人工知能(AI)とロボットを組み合わせ、薬の開発に使う質の良い細胞を自動で作る取り組みを、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)と武田薬品工業の子会社が始めることが、15日までに分かった。細胞培養を担う熟練の技術者の人材不足を補うと期待され、年内に共同で技術開発に着手する。2024年度に実用化し、製薬会社向けの培養事業の展開を目指す。
産総研によると、抗がん剤の効果を調べるがん細胞や、再生医療で患者に移植する細胞など、創薬や研究では多様な細胞を培養する必要がある。しかし人材不足に加え、体内にあるのと近い状態に保たれているかなど細胞の質にばらつきが出る課題がある。
新技術は、産総研などが開発した実験作業ロボット「まほろ」を活用する。
過去に培養に成功した細胞と失敗した細胞の画像を大量に読み込ませてAIで学習させる。さらに、成功例の細胞内にあるタンパク質の種類や量といった情報も与え、ロボット自らが実験を繰り返して狙った通りに作る最適条件を見いだすようにする。
学習の素材には、理化学研究所から提供を受ける人間の細胞の画像などを使う。武田薬品の子会社が24年度に培養を請け負う事業を始める計画。
産総研人工知能研究センターの光山統泰・研究チーム長は「職人技の塊である細胞培養を、AIとロボットで高い精度で自動化することを目指す。実現すれば、質の高い細胞を数多く供給でき、より良い薬を短期間で作れるようになる」と話す。