アサヒビールは4日、業務用を中心にビール類(発泡酒は含まない)を、来年3月1日出荷分から値上げすると発表した。対象商品は、たる詰めや瓶といった容器を回収する商品で、缶は含まれない。居酒屋などで提供される酎ハイ向けの焼酎なども値上げする。値上げ幅は明らかにしていないが、10%前後とみられる。人手不足に伴う物流費の高騰などコスト上昇に対応する。値上げは2008年3月以来、10年ぶり。
同業他社で値上げを表明しているメーカーは現時点ではないが、「課題は共通している」(キリンビール幹部)、「コストや市場環境を踏まえ、価格改定については常に検討している」(サントリービール幹部)などとしており、値上げが広がる可能性もある。
アサヒの値上げは6月の酒の安売り規制強化で、原価を下回る価格での販売が取り締まりの対象となったからだ。物流費の高騰に加え、たるや瓶は回収や洗浄でコストがかさむ。ビール離れで出荷量が落ち込んだ結果、固定費負担が増えたことも生産コストを押し上げている。
値上げは卸会社へのメーカー出荷価格で、飲食店やスーパーなどの店頭価格は小売り側が決める。特に居酒屋などの飲食店は、6月に強化された酒の安売り規制の対象外だ。
それでも卸会社からの仕入れ価格上昇を通じ、影響が出始めている。既に居酒屋チェーンの鳥貴族が10月1日にビール類を含む全商品の値上げに踏み切るなど、飲食店でも価格見直しの動きが広がりかねない。