住宅と同様、オフィスビルや商業施設でも、二酸化炭素(CO2)の排出量をいかに削減できるかが課題となっている。こうした中、積水化学は室内光にも反応し発電するフィルム型太陽電池と、蓄電機能を持つ大容量フィルム型リチウムイオン電池を組み合わせた、発電・蓄電一体型の新たなデバイスの開発に乗り出した。電源なしに空調や照明の制御を行うセンサーを実用化することによって、スマートオフィスなどの普及促進につなげる計画だ。
新デバイスを実用化する上で重要な役割を果たすフィルム型太陽電池は、光を吸収する色素を利用して発電する色素増感太陽電池。通常のシリコン系太陽電池と異なり、照度500ルクス以下の室内でも発電でき、モジュール部のうち8割が影になっても発電を行う。
また、高速で粒子を吹き付ける常温セラミック成膜技術を活用しているためモジュールのフィルム化を実現した。軽量化によって持ち運びが便利になり、曲線を描くようなデザインも可能になった。
この特性を生かして大日本印刷と共同でさまざまな製品化の取り組みを進めており、第一段として屋内外でも発電・駆動するため電源が不要となる電子ペーパーを開発した。
電子ペーパーは交通機関の時刻表や案内図、広告などを表示する。光の反射を利用しているため照明下や日中の屋外などでも見やすく、次世代の情報メディアとして期待されている。しかし、駆動に必要な電池交換や電源確保が普及の足かせとなっていた。
今回開発したのは、こうした課題を克服できるタイプで、都内のコンビニエンスストアの店頭に電子看板として設置し、実証試験に取り組んでいる。今後は、急増する外国人観光客向けの案内板などの需要も期待できる。