【高論卓説】変貌する中国企業の「走出去」戦略 主役はベンチャー、先進国にも進出 (1/2ページ)


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 この夏、英国中部マンチェスターに2週間ほど滞在した。世界でも名高いマンチェスター大のビジネススクールにあるイノベーション研究所を訪問するためだ。産業革命の先駆的都市として知られる同地を訪ねたのは初めてだったが、歴史ある町並みのあちこちで「モバイク」の自転車に遭遇したのには驚いた。

 自転車シェアリングサービスを提供する中国のベンチャー企業「摩拝単車(モバイク)」は、同国内で急成長を遂げた。今もその勢いを保ち、シンガポールや日本、タイ、英国、イタリアなど海外にも進出している。マンチェスターでは、29ポンド(約4400円)の登録デポジットを払い、50ペンス(約75円)で30分間利用できる。使い勝手の良いアプリと手ごろな料金で、どこでも気軽に乗れるため英国でも人気を博している。

 21世紀に入り、中国は「走出去」(海外進出)の戦略の下で、国内企業の海外投資を積極的に推し進めてきた。その結果、中国企業による海外投資は順調に増えていき、海外直接投資額は2006年の212億ドル(約2兆3650億円)から15年には1457億ドルまで伸び、米国に次ぐ世界2位の投資規模となった。

 その中で、中国企業の「走出去」に主役の交代が起きている。当初、国有企業を中心に石油や鉄鉱石などの資源を求めて資源国に殺到していたが、中国経済の減速や原油価格の変動でこのような形の「走出去」は挫折している。ここ十数年は大手製造業や不動産業などの“お金持ち”民営企業の「走出去」が目立った。M&A(企業の合併・買収)で優良資産を獲得しようとする思惑があったが、ここにきて中国からのキャピタルフライト(資本逃避)への懸念から海外投資への規制が厳しくなり民営企業の動きは鈍い。

注目されているベンチャー企業の「走出去」