東芝メモリの売却先決定を受け、三井住友銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行などの東芝の主力行には安堵(あんど)感が広がった。だが、売却交渉の長期化で、地方銀行を中心に東芝経営陣への不信感は強まっている。今後、融資を引き揚げる動きが止まるかは予断を許さない。
これまでの交渉過程で主力取引行幹部は、「とにかく時間との闘い」だと再三、東芝に対し苦言を呈した。来年3月末に債務超過が解消できず、上場廃止になれば、資本注入の検討を本格化せざるを得なくなるためだ。9月中の売却先選定は「タイムリミットぎりぎり」(主力行幹部)の決断だった。
今回、東芝が売却先を決めたことで、最悪の事態が回避される可能性は高まった。だが、銀行団の間では東芝への融資に対する温度差がすでに生じている。
主力行は「東芝の資金繰りを支えるとの大原則は揺らいでいない」と強調し、債務者区分を上から2番目の「要注意先」として正常債権にとどめている。しかし地銀や大手銀の一部は、東芝を「破綻懸念先」などの不良債権に位置付けており、新規融資は難しい状態にある。
今後“東芝離れ”を表明する地銀などが増えれば、再建に不可欠な金融機関の足並みは、さらに乱れかねない状況だ。
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