金融とITを融合した新サービス「フィンテック」を取り入れるため、国内銀行が新会社を設立したり、ベンチャー企業と手を組んだりする動きが加速している。異業種でIT大手の米アップルやグーグルが銀行の“専売特許”だった決済サービスに乗り出しており、存在意義が揺らぎかねないとの危機感を持っているためだ。ただ、根強い「現金主義」と日銀の「マイナス金利政策」によりサービスの差別化が難しくなっていることで、思うように普及が進むかは見通せない。
現金主義が普及の壁
「フィンテックは金融ビジネスを大きく変えるドライバー。うまく活用すれば効率的に事業拡大できる」。全国銀行協会の平野信行会長(三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)は14日の定例会見で、こう期待を寄せた。
傘下の三菱東京UFJ銀行はシリコンバレーに人材を派遣しているほか、フィンテックの研究や開発をする新会社を今秋に設立。決済の迅速化やコスト削減につながる技術開発などを素早く進める狙いから、銀行と別組織とするなど矢継ぎ早に手を打ち始めている。
7月には携帯電話番号とメールアドレスを入力するだけで、通販サイトから衣料品などを購入できるオンライン決済サービス「Paidy(ペイディー)」を手掛けるベンチャー企業に出資。「多様化する決済手段の一つとして根付く可能性もある」との判断からでITを活用した独自の仮想通貨「MUFGコイン」の開発も同時並行で進めている。