WDは東芝メモリの経営関与を薄める譲歩案を示す見返りに、東芝と協業する三重県四日市市のフラッシュメモリー工場で、生産配分などを有利な形にするよう求めた。半導体メモリー市場の世界的な活況を踏まえ、経営の主導権争いよりも、当面は最先端メモリーの開発・生産拠点における“実利”を優先する思惑だ。
WDと共同運営する三重県四日市市の既存工場をめぐり、東芝は8月、建設中の新製造棟への新規投資からWDを排除する方針を表明した。
東芝とWD傘下の米サンディスクは共同で工場への設備投資を行い、負担割合に応じて製品を分け合う契約を結んでいる。新規投資から排除された場合、新製造棟で生産した製品は得られない。WDは業績悪化への危機感から、東芝に歩み寄りを見せた。
東芝が6日の取締役会で、岩手県北上市にメモリーの新工場を建設する計画を決定したのも、WDに揺さぶりをかけ、一段の譲歩を引き出す狙いとみられる。
ただ、WD側が東芝に示した新たな提案では、東芝メモリ買収時の転換社債による資金拠出を撤回する半面、新製造棟への投資容認や既存の製造棟で生産するメモリーの割り当て拡大を求めた。現在は東芝が約6割、WDが約4割だが、東芝の一部設備をWDが買い取って比率を調整し5対5にすることが有力だ。