自然発火しやすい資源どう運ぶ? 川崎重工、豪州の褐炭を日本へ輸送 水素社会を下支え (1/3ページ)

川崎重工業が開発を進める液化水素運搬船の完成予想図。2020年から実証を行う計画だ
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 川崎重工業が、オーストラリアに埋蔵された褐炭と呼ばれる低品位の石炭から製造した水素を日本へ運ぶ技術の開発を進めている。液化した水素を貯蔵するタンクと、それを運ぶタンカーの開発が柱で、2020年にも実証実験に乗り出す。液化水素を燃料に使う種子島のロケット基地などで培ったノウハウを生かし、水素社会の下支え役を担おうとしている。

 低品位で安い資源に着目

 「埋蔵量が豊富なうえ、現地で少量が利用されているだけなので安い。これを元に水素を作り、輸送できれば日本にとって大きなプラスになる」

 川崎重工の西村元彦・水素チェーン開発センター副センター長は、褐炭の魅力をそう力説する。

 褐炭は、低品位なうえに水分量が50~60%と多く、乾燥させると自然発火しやすいので輸送にも適さない。オーストラリアは世界有数の石炭埋蔵国で、そのうち半分を褐炭が占めるにもかかわらず、現地の発電にしか利用されていないという。この褐炭から製造した水素を、需要のある日本まで安全に運べれば、資源確保の問題解決につながる。オーストラリアにとっても、資源輸出の拡大や産業・雇用の創出が期待できる。

 しかも、褐炭が存在する南東部のビクトリア州ラトロブバレーから80キロ東方には枯れかけの海底ガス田があり、水素製造時に発生した二酸化炭素(CO2)の貯留地として活用できる。このため、化石燃料から水素を作る場合に問題となるCO2排出も避けられる。

セ氏マイナス253度に冷やして液化し運搬