街路灯に基地局機能を組み込んだ次世代携帯電話の中継システムを検証する実証実験が10月末から、広島県福山市の鞆の浦で始まる。第5世代移動通信システム(5G)では、中継用の基地局が現行の第4世代(4G)より細かい密度で必要になると見込まれるためで、機材を開発した通信大手「KDDI」(東京)が、実証実験に向けた覚書を市と締結した。
実証実験は、アンテナと無線機を柱の中に収納した基地局収容型LED街路灯「ゼロサイト」を観光スポットの鞆の浦に設置。約1年間の運用を通じて、天候や地形の影響、保守整備上の課題などを検証する。
ゼロサイトは、現行の携帯電話中継サービスで最も高速な4GLTEに対応していることに加え、観光客向けの無料Wi-Fiサービスも提供する。
同社によると、街路灯をアンテナとして利用している基地局はこれまでにも設置されているが、基地局機能すべてを組み込んだ街路灯が設置されるのは鞆の浦が初めて。実証実験の候補地を求めていた同社と、観光サービスの向上に向けた新たな展開を探っていた市の意向が一致した。
携帯電話などの移動通信システムは、数年後には5G時代に突入し、利用する電波が4Gより高周波数になるとみられる。周波数が高いほど直進性が強いため障害物に影響されやすく、距離による減衰も大きいため、基地局は現行より多く必要になる。
しかし、市街地などでは専用施設の増設は困難なため、既存の街路灯を基地局兼用のものに取り替えることで5G時代に対応する方式が立案された。