東証1部最後となる東芝株の終値を示すボード=31日午後、東京・八重洲【拡大】
東芝は東京証券取引所1部から2部への指定替えにとどまらず、上場廃止も現実味を帯びてきた。上場を維持するには、平成29年3月期の有価証券報告書(有報)に監査法人の「適正意見」をつけて提出することや、来年3月末までに債務超過を解消することが条件になるが、そのめどが立っていないからだ。(柳原一哉)
東芝は29年3月期の有報を法定期限の6月末に提出できず、8月10日まで延期した。新たな期限までわずかだが、PwCあらた監査法人との協議は難航しており、適正というお墨付きがない異例の状態で提出する可能性が出てきた。
PwCあらたは東芝が米原発事業の巨額損失を認識した時期を問題視。東芝は「昨年12月に認識してその時点で損失を決算に計上した」と主張したが、PwCあらたは東芝が28年3月に損失を認識していた可能性があり、遡(さかのぼ)って決算を修正する必要があると指摘する。
東芝はPwCあらたから具体的な修正額が示されれば、それに沿って修正する構えだが、いまだに「結果待ちの段階」(関係者)という。残された期間で決算を修正し、再度の監査を経て適正意見を得るのは現実的に難しい。東芝は東証による上場可否の審査を受けている最中であり、有報に「意見不表明」や「不適正意見」がつけば、審査に悪影響が出るのは必至だ。
一方、上場廃止になる2期連続の債務超過を解消するには、半導体子会社「東芝メモリ」を来年3月までに売却する必要がある。ただ、売却に反対する米ウエスタンデジタル(WD)との係争解決の糸口が見えず、官民ファンドの産業革新機構を中心とする「日米韓連合」との売却契約締結も宙に浮いている。東芝再建の道筋は闇に包まれたままだ。